銀座メゾンエルメス Window Display
メゾンエルメスの ウィンドウディスプレイ
これまでもっともトライしてみたかった仕事の
ひとつだ
話が舞い込んできたのは今年の1月
表面に見えるサボテンの背景にいる
今回のディスプレイを支えてくれた人々は
知っているだけでも ざっと50人ほどはいる
全ての人が 積み上がってかみ合ったからこそ形になった
それだけこの仕切られた空間で
サボテンを絨毯のようにたった一晩で植え込む事が
困難なことだということだ
タイトルは「旅の途中」
使用しているサボテンは27種類 約2500本
’旅’ というのは
この世界に入っている二人の ’旅’
そしてサボテンの ’旅’ という2つの旅が 意味として込められている
不思議な世界に舞い降りた二人は植物調達を開始する
どこの国 どこの時代かも連想しにくいような
遠い世界の服装を纏った二人はあたりを気にしながら
繁茂する植物の中を 旅する
今回使用しているサボテンは
出来る限りからだが大きくならないように
強い直射日光に耐えるため 白や黄色の毛を纏い
呼吸も夜間にこっそりおこない
ただただ遺伝子をつなぐことを使命とし
生きる
大きくなるだとか 生息域を拡大していくだとか
いう野望は無く
サボテンという乗り物を使い
遺伝子は 旅 をしている
シンプルに ただあり続ける事のみを目的として
エルメスから渡されたテーマは「自然ー軽やかなギャロップ」
自然とは 文明が入り込んでいない あるがままの状態
もちろん自然を象徴する植物を密集して植え込み
自然を表現しているわけだが
今回は少しだけ いたずら心を 組み込ませてもらった
この世界には それぞれ1本ずつ 接ぎ木を仕込んでいる
緑の柱サボテンの上に 一方は黄金色の
一方は白い柱状のサボテンが接がれている
どちらも人間の意思で接がれたもので自然界には無いもの
そこには文明が垣間見える
しかしそれぞれの植物は時を経て
人の作為や思惑を遥かに越え
植物の意思で 自然に戻ろうとしている
植物は生きる
そのたくましさこそは
叢で伝えていこうとしている
植物の美しさ